「ハクビシン」という名前を耳にしたことがある方は多いかもしれませんが、実際にどんな動物で、何を食べて生きているのかご存じでしょうか。夜中に屋根裏や庭先で物音がしたとき、その正体がハクビシンだったというケースも少なくありません。ハクビシンは雑食性で、人間の生活圏にある果物や野菜、さらには台所の残飯まで食べてしまうため、農作物の被害や家庭でのトラブルが多く報告されています。本記事では、ハクビシンの習性や食性、好む食べ物と嫌う食べ物、さらには食べさせてはいけないものまでを詳しく解説します。生態を理解することで、被害防止や共生のヒントにもつながるでしょう。

ハクビシンの基本的な習性
夜行性で木登りが得意な生活スタイル
ハクビシンは典型的な夜行性動物です。昼間は人家の屋根裏や木の洞(うろ)などの安全な場所で休み、日が暮れると活動を始めます。非常に身軽で、特に木登りが得意です。その身体能力を活かして、木の枝や電線を伝って簡単に建物の屋根に到達することができます。都市部でもたくましく生きていけるのは、この高い運動能力のおかげです。
縄張り意識と繁殖期に見られる行動
ハクビシンは基本的に単独で行動し、自分の縄張り(テリトリー)を持って生活します。糞尿でマーキングを行い、他の個体の侵入を警戒します。繁殖期にはペアで行動することもありますが、子育てが終わると再び単独の生活に戻ります。屋根裏から騒がしい鳴き声や物音が聞こえる場合、繁殖や子育てが行われている可能性も考えられます。
ハクビシンの食性とは?
基本は雑食性でなんでも食べる
ハクビシンの食性を一言で表すと「雑食性」です。植物質から動物質まで、手に入るものなら何でも食べます。この柔軟な食性が、都市部から山間部まで幅広い環境に適応できる理由の一つです。人間の生活圏では、農作物や家庭ゴミが容易に手に入る餌となり、彼らを引き寄せる原因となっています。
季節によって変化する食べ物の種類
ハクビシンの食べるものは、季節によって変化します。
春・夏
昆虫や鳥の卵、木の実、出始めの果物などを食べます。
秋
実りの季節であり、カキやブドウなどの果物、トウモロコシやサツマイモといった農作物を中心に食べます。
冬
食べ物が少なくなるため、ネズミなどの小動物を捕食したり、人間の出す生ゴミへの依存度が高まったりします。

ハクビシンが好む食べ物
果物類(柿・ブドウ・スイカなど)
ハクビシンは特に糖度の高い甘い果物を大好物とします。被害報告が多いのは以下のような果物です。
- カキ
- ブドウ
- モモ
- スイカ
- イチジク
- ミカン
木に実ったままの果実を器用に食べるため、農家にとっては非常に厄介な存在です。
野菜や農作物への被害事例
果物だけでなく、野菜や穀物もハクビシンのターゲットになります。特にトウモロコシは被害が多く、一番甘い先端部分だけをきれいに食べていくという特徴があります。他にも、トマト、サツマイモ、メロンなどが被害に遭いやすい作物として知られています。
昆虫や小動物を食べるケース
ハクビシンは優れたハンターでもあります。昆虫、ミミズ、カエル、ネズミ、鳥のヒナや卵なども捕食します。生態系の中では捕食者としての一面も持っていますが、時にはペットの鳥や金魚が狙われるケースもあるため注意が必要です。

ハクビシンが嫌う食べ物
匂いが強いもの(ミントや香辛料など)
ハクビシンは嗅覚が発達しているため、刺激の強い匂いを嫌う傾向があります。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- ニンニクや唐辛子などの香辛料
- ハッカ(ミント)系のハーブ
- 石油系の匂い(灯油など)
- 木酢液や竹酢液
人間が利用できる忌避効果のある食材
これらの嫌う匂いを利用して、ハクビシンを遠ざけることができます。例えば、唐辛子を細かく刻んだものや、ニンニクをすりおろしたものを布袋に入れて、侵入経路や被害場所に設置する方法があります。ただし、効果は永続的ではないため、定期的な交換が必要です。
ハクビシンに与えてはいけない食べ物
中毒を起こす可能性のある食材(チョコレートやタマネギなど)
可愛らしい見た目から餌付けを考える人もいるかもしれませんが、絶対にやめましょう。特に犬や猫に有害な食べ物は、ハクビシンにとっても危険です。
チョコレート
テオブロミンという成分が中毒を引き起こします。
タマネギ・ネギ類
赤血球を破壊し、貧血や呼吸困難を引き起こす可能性があります。
その他
キシリトール、アボカドなども有害とされています。
人間の加工食品が及ぼす悪影響
塩分や糖分、脂肪分が多い人間の加工食品は、ハクビシンの健康を害します。また、一度餌付けをしてしまうと人間に依存するようになり、より大胆に家屋へ侵入したり、ゴミを荒らしたりする原因となります。野生動物との適切な距離を保つためにも、餌やりは厳禁です。

ハクビシンの食べ物と人間生活への影響
農作物被害とその実例
ハクビシンによる農作物被害は全国的に深刻な問題です。特に果樹園では、収穫直前の果物が一夜にして全滅させられることもあります。トウモロコシ畑では、皮をむいて実だけを食べるという器用さを見せ、経済的な損失は計り知れません。
家庭でのゴミ荒らしや衛生問題
都市部や住宅街では、家庭から出る生ゴミがハクビシンの格好の餌食となります。ゴミ集積所が荒らされると、悪臭や景観の悪化だけでなく、ハクビシンの糞尿による衛生的な問題も発生します。また、家に住み着かれた場合は、糞尿による建材の腐食や、ノミ・ダニといった害虫の発生源にもなり得ます。
ハクビシン対策と食べ物をめぐる工夫
食べ物を狙わせないための予防策
最も効果的な対策は、ハクビシンに「ここには餌がない」と学習させることです。
ゴミの管理
生ゴミは蓋付きの頑丈な容器に入れ、収集日の朝に出す。
果樹の管理
庭の果樹は早めに収穫し、地面に落ちた果実は放置しない。
ペットフードの管理
屋外で飼っているペットの餌は、夜間は片付ける。
食性を利用した効果的な撃退方法
ハクビシンの嫌う匂いを活用した忌避剤は、一時的な撃退に有効です。市販の動物用忌避剤の多くは、唐辛子のカプサイシン成分やニンニク、木酢液などの匂いを利用しています。侵入されやすい場所や被害のあった場所に設置することで、近寄りにくくする効果が期待できます。
まとめ
ハクビシンは雑食性で、果物や野菜、昆虫から人間の残飯まで幅広く口にします。その旺盛な食欲と適応力の高さから、農家や家庭にとっては被害を及ぼす存在となる一方、食べ物の嗜好や嫌う匂いを理解すれば、被害を最小限に抑える工夫も可能です。甘い果物を好む一方で、唐辛子やニンニクなどの刺激臭を嫌うという食性を知ることは、効果的な対策の第一歩となります。 また、どんなに可愛らしく見えても、人間が与えてはいけない食べ物があることを知っておくことも大切です。餌付けはハクビシンの健康を損なうだけでなく、人間への依存を強め、さらなる被害を呼び起こす原因となります。ハクビシンは身近な里山や住宅地に適応して生きているため、正しい知識を持つことが共生や被害防止につながります。この記事を通じて、ハクビシンの食性と人との関わり方について理解を深めていただければ幸いです。
