
「夫婦共働きなので、お互いの職場に通いやすいエリアで家を探しています」 「今の家賃と同じくらいの返済額で、できるだけ駅近がいいです」
不動産の販売現場にいると、毎日のようにこういったご希望を伺います。 毎朝の満員電車、本当に疲れますよね。少しでも通勤のストレスを減らして、仕事と家庭を両立させたいというお気持ちは、痛いほどよくわかります。
でも、そんな風に「今の職場への通勤」を最優先にしてエリアを絞っている方に、不動産営業の私から、少しだけ野暮な質問をさせてください。
「今のそのお仕事、一生続ける予定ですか?」
もし、少しでも「うーん……」と言葉に詰まったなら、この記事を最後まで読んでみてください。 人生の大きなお買い物を、もう少しだけリラックスして考えてみるための、不動産屋からのちょっとした提案です。
「今の条件」で家を買うと、自分の首を絞める?

現在の収入ベースで、通勤に便利なエリアの、ハイスペックなお家を買う。 これは確かに誰もが憧れる理想のマイホームの形です。
しかし、今は「大転職時代」です。 どれだけ今の会社が好きでも、業績の悪化、理不尽なパワハラ、度重なる残業、突然のボーナスカットなど、自分の力ではどうにもならない予想外の要因で、「会社を辞めたい」「転職したい」と思う日が来るかもしれません。
そんな時、もし「便利なエリアで、今の収入ギリギリの住宅ローン」を組んでいたとしたら、真っ先に頭をよぎるのは何でしょうか。
「転職して収入が下がったら、この家のローン、払っていけるかな……?」
この不安です。 便利なエリアの高い家を買ったことで、「ローンがあるから、どんなに辛くてもこの会社を辞められない」という呪縛に自らを縛り付けてしまう。これは、本来あなたを幸せにするはずのマイホームが、あなたの人生の選択肢を奪う「鎖」になってしまっている状態です。
今の段階の収入と、今の段階の勤務条件だけでお住まい探しをすると、数年後にこんなふうに自分の首を絞める結果になりかねないのです。
【実体験】私が通勤「1時間半」の家を買った理由

偉そうなことを言ってしまいましたが、実は私自身も、少し変わった家探しをした一人です。
私が購入したのは、当時の職場から片道「1時間半」もかかる場所にある、トータル85坪の土地と建売住宅でした。決して便利な駅近エリアとは言えません。
でも、物件の価格がとにかく安かったのです。 フルコミッションの個人事業主という立場で「フラット35」を使ってローンを組みましたが、毎月の返済に対する大きな不安やプレッシャーは全くありませんでした。
「まあ、いざとなれば転職して給料が下がっても、この返済額ならなんとかなるだろう」
そんな風に、心に大きな「余白」を持てたことが、私にとっては何よりの財産でした。
休日は、広い庭にDIYで単管パイプの小屋を組んでみたり、グラベルロードバイクのメンテナンスをしたり。今は4匹の猫たちと、烏骨鶏などの鶏が11羽、そして犬と一緒に、緑豊かで静かな環境で、のんびりとしたスローライフを楽しんでいます。
通勤に時間はかかりましたが、「帰るのが楽しみになる家」があったからこそ、毎日の仕事も頑張れました。
人生は、家を買った後にいくらでも変わる

不便なエリアで家を買った私ですが、その後どうなったか。
結果的に、4年近く片道1時間半かけて通勤したのち、ご縁があって自宅のすぐ近くにある現在の不動産会社(規格住宅の工務店)に転職することになりました。
なんと、今の通勤時間はたったの「20分」です。
もし私が、4年前に「当時の職場への通勤」を最優先して、都心寄りの高い家を無理して買っていたら、この素晴らしいご縁にも巡り会えず、可愛い動物たちと暮らす広い庭も持てなかったでしょう。
通勤時間が劇的に短くなり、時間に余裕ができすぎたので、今こうして皆さんに向けたブログまで書いています。
人生は何が起こるかわかりません。 職場が変わることもあれば、ライフスタイルがガラッと変わることもあります。だからこそ、家探しを「今の条件の答え合わせ」にするのではなく、もう少しリラックスして、「どんな状況になっても笑って暮らせるベースキャンプ」を探すくらいの気持ちで良いのだと思います。
まとめ:家探しをもっとリラックスして楽しもう

「通勤時間」は、確かに大切な条件の一つです。 しかし、それが最優先事項になりすぎて、予算を無理に引き上げたり、心に余裕がなくなるようなローンを組むのは、プロとしておすすめできません。
家を買うということは、これからの長い人生をより豊かに、より自由に楽しむための手段です。あなたを会社に縛り付けるためのものではありません。
「もし収入が下がっても、この家なら笑って暮らせるかな?」 「この環境なら、仕事が変わっても楽しく生きていけそうかな?」
少しだけ視点を変えて、そんな風にご夫婦で話し合ってみてください。 条件を少し緩めるだけで、今まで見向きもしなかったエリアに、あなたを本当の意味でリラックスさせてくれる「運命のお家」が待っているかもしれませんよ。