「子供も大きくなってきたし、そろそろマイホームが欲しい。でもその前に、ファミリーカーに買い替えようかな」

家探しをしていると、同時に車の買い替えを検討されるお客様が非常に多くいらっしゃいます。駐車場のある家を買うなら、車も新しくしたくなるお気持ちは痛いほどわかります。 しかし、不動産のプロとしてこれだけは絶対に言わせてください。
車のローンを組むのは、絶対に「家を買った後」にしてください。

なぜなら、先に車のローンを組んでしまうと、いざ「この家が欲しい!」という運命の物件に出会った時、住宅ローンの審査に落ちたり、希望する金額が借りられなくなったりする最悪の悲劇を招くからです。
学校でも、車のディーラーでも、誰もこの真実を教えてくれません。今回は、あなたのマイホームの夢を根底から壊しかねない「ローン審査のブラックボックス」についてお話しします。
銀行は「残りの借金総額」ではなく「毎月の支払額」を見る

住宅ローンの審査において、銀行が最も厳しくチェックする項目のひとつが「返済負担率(返済比率)」です。 これは、「あなたの年収に対して、1年間に支払うすべての借金返済額が何%を占めているか」という計算です。
ここで絶対に知っておかなければならない、恐ろしいルールがあります。 銀行は、車のローンの「総額がいくら残っているか」や「あと何回払いで終わるか」は一切気にしません。「今、毎月いくら払っているか(年間いくら払っているか)」だけで機械的に計算をします。
例えば、月に3万円の車のローンを払っているとします。 「あと1年(残り36万円)で完済するから大丈夫だろう」と思っていても、銀行の計算上は「あと5年(残り180万円)ローンが残っている人」と全く同じ扱いを受けます。
残高がいくらであろうと、「あなたは年間36万円(月3万×12ヶ月)の返済を抱えている人ですね」という事実だけが、住宅ローンの借入可能額からガッツリと差し引かれてしまうのです。
スマホの分割、残クレ、奨学金…あなたの借金は「全て」バレています

「車のローンくらいなら隠しておけばバレないんじゃない?」と思う方もいるかもしれませんが、それは絶対に不可能です。
私たちが住宅ローンの事前審査を銀行に出すと、銀行は必ず「個人信用情報機関(CICなど)」のデータを照会します。そこには、あなたの現在の借り入れ状況、過去の支払い履歴、さらには一度でも支払いが遅れたことがないかまで、すべての金融履歴がガラス張りのように記録されています。
そして、この「返済負担率」に加算されてしまうのは、通常のマイカーローンだけではありません。以下のような支払いも、すべて「借金」として住宅ローンの枠を削り取ります。
- 車の「残価設定型ローン(残クレ)」
- 携帯電話・スマホ本体の分割払い(2年契約など)
- 奨学金の返済
- クレジットカードの分割払い、リボ払い
- キャッシングやカードローンの枠(※使っていなくても「いつでも借金できる状態」としてマイナス評価される銀行もあります)
「最新のiPhoneを分割で買っているだけ」「ディーラーでお得だと言われて残クレにしただけ」 その何気ない月々数千円、数万円の支払いが、住宅ローン審査においては命取りになるのです。
「年収の8倍借りられる」は嘘になる。数千万円も融資枠が減る恐怖

一般的に、住宅ローンは「年収の約8倍」まで借りられると言われています。年収500万円の方なら、およそ4000万円が融資可能額の目安です。
しかし、これはあくまで「他に一切の借金(分割払い)がないクリーンな状態」での話です。 もし、この年収500万円の方が、月にたった3万円のマイカーローン(年間36万円)を払っていたらどうなるでしょうか?
銀行の審査用金利(実際に払う金利よりも厳しく設定された計算用の金利)でシミュレーションすると、月に3万円の支払いがあるだけで、住宅ローンの借入可能額は平気で500万円〜800万円近くも減額されてしまいます。
つまり、「年収の8倍(4000万円)借りられる!」と思って4000万円の新築戸建てを見に行っても、いざ審査に出してみると「既存の借り入れが影響して、あなたは年収の5倍(2500万円)までしか貸せません」と平気で言われてしまうのです。
この時点で、夢のマイホーム計画は完全に頓挫します。 「先に車なんて買わなければ、あの理想の家が買えたのに…」と、不動産屋のデスクで肩を落とすお客様を、私はこれまでに何度も見てきました。
家探しを始めるなら、新たな分割払いをしないこと

マイホームの購入を少しでも考えているなら、以下の3つの鉄則を必ず守ってください。
- 車を買い替えるのは、家の引き渡しが終わってからにする
- スマホの機種変更など、新たな「分割払い」をできるだけ組まない
- どうしても欲しい家があるなら、既存のローンを一括返済する準備をしておく
「これくらいなら平気だろう」という自己判断は一番危険です。 すでに車のローンや奨学金がある方は、ネットの「借入可能額シミュレーション」の甘い結果を信じず、まずは私たちのような不動産のプロに相談してください。
既存の借り入れをどう処理すれば希望の家が買えるのか、どの銀行なら審査が通りやすいのか。あなたの状況に合わせて、最適なルートを設計するのが私の仕事です。
後悔しないために、まずは「住宅ローンの事前審査」でご自身の本当の実力を知ることから始めましょう。車を買うのは、マイホームという最高のベースキャンプを手に入れてからでも決して遅くありません!


